例えばあの子は

 

外に出た。

 

歩いて最寄りの駅へと向かう途中、メルヒェンな格好をした女の子がタバコをふかしていた。

 

道ゆく人々は彼女に関心がないようで、みんな一瞥することもなく通り過ぎていった。ただ私だけが、遠くから彼女を見つめていた。

 

しばらく見ていると彼女は吸っていたタバコをポイ捨てして、駅の方角へと走っていった。

 

私も駅へ向かおうとしたが、彼女の捨てたタバコから煙が昇っていたため慌てて踏み消した。次に駅の方を見た時には、彼女の姿はどこにもなかった。

 

もしかすると、あれは私の見た幻だったのかもしれない。そう思ってみたりもしたが、踏み消して平たくなった吸殻は、確かにアスファルトに横たわっていた。